TOPY 鉄を生かすのは、人だと思う。

「自分なりのスタイル」を、どう継承するか。
ベテランとして、いつも頭を悩ませている。

担当エリアによって5つのグループに分かれているマテリアル事業部において、関東地方1都6県、さらに北海道を加えた比較的広範なエリアを担当しているのが東京マテリアルグループである。中村享は東京マテリアルグループのグループ長になって5年になるベテラン営業パーソン。いわゆる現場を熟知した叩き上げであると同時に、後進の育成という大きな責務を背負った管理職でもある。
「グループ長になってしみじみ感じるのは、人間って難しいなあ、ということ。それに尽きますね(笑)」。マテリアル事業部が取引している仕入先のスクラップ業者には、ひとつの傾向がある。それは「オーナー企業」が多いこと。つまり、個人経営や家族経営のようなサイズの企業が多いわけだ。となると、仕入れを担当する各々の営業パーソンが、自然と「マニュアルではない、自分なりのスタイル」を獲得しがち。だが、「自分なりのスタイル」という営業スキルは、なかなか後輩に伝承するのが難しい。何しろ、個人的に培った経験値が基礎になるからだ。
「かつては私も“自分なりのスタイル”でバリバリやっていたんです。それを同じように後輩にやらせても、うまくいくかは分かりません。いまの立場になって、そうではない、共有できるスキルというものも同時に確立していかなければならないと痛感しています」。

若手社員の持ち味を引き出すために。
観察をし、会話をし、そして自分をグッと抑える。

それぞれの「個性」や「キャラクター」を「自分なりのスタイル」に昇華させ、一人前に育てていくためには・・・。その糸口を探すことも中村の仕事のひとつである。「スタッフはみんな違う人生を歩んでいて、違う人格を持っています。軽快なフットワークが持ち味の社員もいれば、堅実に完成度の高い仕事をする社員もいます。だから、アドバイスの仕方も、叱り方も、褒め方も、実は変えなければならないんです。子育てとよく似ていると思いますね」。その社員がどんな性格なのか。どこが強みで、どこが弱みなのか。ソフトの部分を掌握することで、はじめて各人の持ち味が発揮されるのだと中村は語る。
「グループ長というのは、小さい組織とはいえ経営者ですから、自分が動くのではなくて部下を動かすことが大切です。それでも、この立場になって間もない頃は、自分で動きたくて仕方がありませんでした。もともとが営業好きなので(笑)、お客さんと直接話したくてウズウズしてしまう。それを抑えるのも、管理職としての仕事なんですよ」。共通のルールを設定し、チーム全体のクオリティを維持しながら、最終的には「自分なりのスタイル」を身につけさせる。鉄スクラップを扱う業界の特性、個々人の個性、そうしたあらゆる条件を踏まえて、組織を運営することはかように奥が深い。

めちゃくちゃ面白い、鉄スクラップの仕事。
この面白さを、ぜひ味わってほしい。

入社以来、鉄スクラップを扱ってきた中村は、この仕事を「めちゃくちゃ面白い!」と断言する。「他愛のない会話の中から、ポンとビジネスのきっかけが生まれる瞬間があるんです。これが最高にうれしい。そういう飾らない人間関係が築ける業界。少し古くさいかもしれないですが、義理人情とか人肌のようなものが、しっかりと残っているし、温かい人付き合いができる。おススメだと思うんですけどね」。
かつて東京の下町・砂町に製造所を構えていた親会社のトピー工業。その当時から取引をしていたスクラップ業者は世代が代わり、スクラップを取り巻く環境もまた変わった。それでも、昔のよしみで「ひいき」にしてくれる業者もいる。「そういう、先輩から継承した財産を、後輩に渡していくのも私たちの責務です」。もちろん時代とともに、「ひいき」の威光は薄れていきがちだ。それはトピー実業にとってはリスクにもなる。だが、「チャンスにもなり得る」と中村はひるまない。
「自分なりのスタイル」や「義理人情」といった、無形の財産。目には見えない、けれどもこの仕事の核心にあるもの。そうした財産を組織の中でいかに次の世代に引き継いでいくのか。中村はいま、そんな大きな責任をひしひしと感じている。そしておそらく、それが上手くいった時には「めちゃくちゃ面白い!」と最高の笑顔を見せてくれることだろう。